2017/04/06

デベロップメントサイクル

前々回は、低温短時間焙煎の後半の成分進化(デベロップメント)の法則を探ってみました。

後半は、水抜きが完了したら、釜の内部温度を上げ、豆の表面温度の進行時間を変化させて,最適なロースティングポイントを見つけるわけですが、そこには重要な法則がありました。

通常、低温焙煎の場合、水が抜けてからストップウォッチをスタートさせて、後半のポイントを探っていく方法がベストと思われますが、この方法はどうもしっくりいきません。

水抜けの判断によって、スタートがまちまちで基準点が前後してぶれるため、正確なロースティングポイントを探ることができないためと思われます。

そこで、水抜けとは関係なく、どこかに一定のスタート地点を決めて、其処から最適なロースティングポイントを探ることで、糸口がつかめてきました。

スタートがぶれないため、後半の進化の時間と温度変化を正確に測って、カップを精査していくと、カップの変化がわかってきます。

突き詰めていくと、豆の表面温度が167度にいたってから、4分後に表面温度が191~2度前後で終了すれば、浅煎り=フルフレバーローストが出来上がります。

Photoこの場合、 投入から7分で表面温度が167度に至るようにすれば、高温短時間焙煎とまったく同じトータル時間となります。

(左のプロファイルは以前示した高温短時間焙煎と低温短時間焙煎を合体させたものです。)

この結果、たんに投入から時間を計測すれば済むことで、何ら難しく考えることはなかった結果となります。

しかし、このことは成分のデベロップメントはもっと早い段階、すなわち水抜け以前の段階で始まっていると捉えることもできます。

水ぬきの工程の段階で、デベロップしながら水が抜けていく・・・・・とイメージしていただければよいと思います。

焙煎を前半の水抜きと、後半の成分進化に分けるコンセプト自体は、焙煎を解かりやすく把握するにはいいのですが、これに厳密にこだわりすぎると、これもまた焙煎の迷路にはまり込むことになります。


水が抜けてから、成分のデベロップメントが始まると厳密に解釈して、其処から最適なロースティングを探ってもなんら回答は出てこないわけです。

むしろ水抜け以前のもっと早い時点からデベロップは始まっていて、そのあたりを基準点として固定して、最適なロースティングポイントを探っていけば、その最適解が得られます。

固定する基準点は豆の表面温度が150℃でも160℃でも良く、一度決めたら変更せずにその基準点から釜出し迄の時間と温度を検証していけば、良いわけです。

ただ、水抜けのペースも管理していかなければならないため、僕はもう少し後の豆の表面温度が167℃あたりを基準点にしています。

投入からその167℃までのペースをしっかりと管理して、水抜けを精緻に進行させ、167℃になったら今度は釜出しまでのペースを管理して、ロースティングポイントをはずさないようにすれば、焙煎の管理としてはほぼ完璧になります。

ここで、注意していただきたいのは、167℃の時点ではまだ水も抜けていないし、成分も未発達で、いわゆる水抜けと成分進化の曖昧なグレーゾーンということです。

このあたりを基準点にして、投入から基準点までの時間を操作して、最適な水抜けのペースを模索し、基準点から釜出しの最適なロースティングポイントを模索するのが焙煎の醍醐味と思います。

ピッたと上手くはまれば、今までなしえなかった、個々の豆が持つテロワールを引き出すことが出来ます。

模索を繰り返して出てきた結果、浅煎りの最適解は、投入から7分で豆の表面温度が167℃になり、かつその時点から4分後に191~2℃に至ることでした。

その1分後(12分)に豆の表面温度が197℃前後に至れば、中煎りとして最適なポイントになります。

そして、2分後(13分)202℃前後、3分後(14分)に207℃前後、、、といったように1分間に5℃上昇させることによって、中煎り以降の最適なロースティングポイントを見つけることが出来ます。

では、1分間に5℃上昇であれば2分30秒(13分30秒)で204.5度はどうでしょうか?

これはうって変わったように、フラットでレスクリーンになります。3分30秒(14分30秒)で209.5℃も同じで、カップはよくなりません。

どうやら進化のサイクルがあるようで、ベストなロースティングポイントから徐々にカップが悪くなり、そしてべストポイントから1分後に再びカップがよくなるといったサイクルがあるようです。

ベストポイントのときはブライトでストラクチャリでクリーンですが、それを過ぎるとブライト感が後退していき、フラットでレスクリーンになってきます。

ちょうどベストポイントから30秒後がこのピークにあるようで、再び改善しながら1分後のベストポイントに至るわけです。

(ライト、シナモン、ミディアム、、といったローストの段階を細かく分けた従来の方法は、カップからまったく意味をなさないと、ご理解いただけると思います。)

これを僕はデベロップメントサイクルといっていますが、あくまでも1分に5度上昇ペースが条件で、上昇ペースがこれより高かったり低かったりするとこのサイクルは成立しません。

偶然に13分で202℃前後で終了して、最適なカップが出てきても、1分後に7度上昇14分で209℃であれば、カップは良くなりません。

焙煎が捉えどころのない迷路のようなものになってしまう、後半最大の原因がここにあります。

 

2017/03/11

読者からのメール Ⅱ

前回からは、焙煎後半の成分進化・デベロップメントの段階に入りましたが、またまた、脱線します。

以前から、“ダンパー操作”のご質問が多くあります。

なんかいいタイミングがあったら、ブログで総括したいと思っていましたが、低温焙煎においては、デベロップメントの段階でとても重要な操作になりますので取り上げました。

おそらく多くの方が気づかない盲点だと思います。

ダンパー操作自体は複雑に考えすぎると、焙煎そのものをシンプルに捉えられなくなり、焙煎の迷路にはまり込んでしまいますので、要注意です。

焙煎をシンプルに捉えるためには、とりあえずダンパーは全開に固定して、豆の表面温度の進行ペースを、釜の内部温度とともに管理していくことがベストと思います。

おおむね、業務用の焙煎機は排気能力と火力のバランスはある程度考慮されているからです。

この作業を積み重ねて行くと、ダンパーと火力の相関関係が見えてきます。
 
----- Original Message -----
To: hdfsw452@ybb.ne.jp               
Date: 2017/3/1, Wed 15:57
Subject: ご質問です。
            
山本様

はじめまして○○と申します。
いつもブログを拝見させていただいております。
わたくしはフジローヤル改103(直火)で焙煎しております。

特に山本様の「低温短時間焙煎」は大変興味深く、いつも楽しみに読ませていただいています。

今回ふと気になったことがありましたのでメールさせて戴きました。

焙煎機はフジローヤル105だと思いますが、焙煎中のダンパー操作について一切書かれておりませんので気になりました。

巷では排気はニュートラルを追いかけ開いていく派。
しかもニュートラルはホッパー口で調べる派、スプーン口で調べる派

水抜きは負圧で、ロースト時は正圧、ハゼたら負圧といった方法

水抜き時はダンパーを閉めて内圧をかける方法

ダ ンパーは触らず一定派、、、、、等

ダンパーに関しては色々な考えの方がいます。

ダンパーに関して山本様のお考えを聞かせていただければ幸いです。

ブログ「焙煎日記」更新楽しみにしております。
 
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○○さん

メールありがとうございます。
ダンパーのご質問ですが、同じような質問が何件か来ています。

ダンパーを考えすぎると複雑になりすぎて、焙煎をシンプルに捉えなくなります。
焙煎は豆の表面温度の進行をきっちりと管理する、というごくシンプルな作業と捉えてください。

豆の表面温度の進行をコントロールするためには、釜の内部温度を管理する必要があります。

そして、この内部温度の管理は火力とともにダンパー操作からも影響をうけます。

火力の強弱とダンパー位置で内部温度は変化するからです。

最初の水抜き工程は負圧のほうが水が 抜けてくれると思います。

熱風式の優位はこの工程にあるわけですから、その理屈はお分かりいただけると思います。

抜く力が強ければ、それに応じて火力を調節して、釜の内部温度を管理して、豆の表面温度の進行ペースをコントロールしていきます。

負荷の強弱に対して、火力の強弱で釜の内部温度を管理するということが、ドラム式の焙煎の真骨頂だということがお解りいただけると思います。

そして、水が抜けたら、デベロップメントを完成させるため、釜の内部温度を上げていかなければなりません。

一定時間内に、釜の内部温度を素早く上げるためには、通常の業務用の焙煎機では火力が不足するため、バーナーの増設をしてそれに対応しました。

この時、負圧が大きければ、それに比例する、より強力な火力の補強が必要なことはお分かりいただけると思います。

しかし、実は火力がある一定の限界を超えると“表面焼け”のカップが出てきます。これはひどいカップになります。アフターが悪化して、フレバーも引っ込んでしまいます。表面焼けによるマスキングです。

これを防ぐための方策は、表面焼けを招く前のぎりぎりの火力を把握して、後はダンパーを負圧から閉じていき、釜の内部温度を上げるしかありません。

一番効率よく上げるダンパー位置では、ニュートラルか圧力が若干かかっているかはよく分かりませんが、全開の時より驚くほど内部温度が上昇してくれます。

純」熱風式の焙煎機であれば、多くの場合、マスキングが起こってしまう可能性があります。

ここにダンパー操作の真骨頂があり、低温焙煎においてはドラム式のほうが断然優れていることがお解りいただけると思います。

その後、釜の内部温度が十分に上がったら、、、ということはファーストクラックを迎えるころになり、排煙の問題から、ダンパーを開放(負圧)しなけばなりません。
 
                          サードウェーブコーヒー   山本敦則

2017/03/02

デベロップメント(成分進化)の実相

1月中はホームページ公開の最終作業が忙しく、ブログが更新できなかったことをお詫び申し上げます。

また、HP制作会社との連絡で、このブログを活用したことも重ねてお詫び申し上げます。

公開したものの、アメリカを中心としたスペシャルティコーヒーの遍歴や低温焙煎メソッド、美味しい珈琲の淹れ方などはまだ途中で完成していません。

低温焙煎メソッドのコーナーでは、希望する方の低温短時間焙煎導入のお手伝いをして、焙煎機の構造から、バーナーの増設、そして低温短時間焙煎をトライした結果として、導入後と導入前のカップの変化を比較した詳細なレポートを報告したいと思っています。

ご希望の方はメールで申し込みください。

また、抽出のコーナーもドリップやプレスだけではなく、他の抽出器具も紹介したいと思っています。特に、エスプレッソを充実させていく予定です。

多くの方が参加するページを作ってまいりますので、投稿をお待ちしています。

日本全体のコーヒーのレベルアップに一助できればと思っています。

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さて、前回までは高温短時間焙煎と低温短時間焙煎を比較検討してきました。

[高温短時間焙煎と低温短時間焙煎 Ⅲ]で、最終工程の成分進化の詳細を検討することをお約束しましたが、この段階はいろんな変数が複雑に絡み合って、焙煎の最大の“謎”でもあります。

僕自身も整理がつかなくて、どう説明してよいか思案していました。

何回も書き直しては、読み返し、そして書き直し、、、を繰り返しても、後半の実態を上手く説明することが、なかなかできません。

それは、後半は後半で新たにをスタートをして、成分進化のペースを計測していくか?それとも従来どうりに投入からのペースだけを計測していけばよいか?の結論が出てこなかったためです。

???どういうことかと言いますと。

高温短時間焙煎も含めて通常の焙煎は、投入から豆の表面温度がどのくらいのペースで進行して、何分になったら何度でファーストクラックがきて、最後は投入から何分の時、何度で釜出しをするか?という、すべて投入時点からの時間進行で焙煎の進行管理をします。

(それが一番シンプルで、解りやすいからですが、もうひとつ重要な要素がありますが、後述します。)

低温短時間焙煎も同じアプローチでいってもよいのですが、水が抜けた時点で焙煎を前半と後半を明確に分けるため、水が抜けた時点から後半をスタートさせるほうが、より自然なアプローチのように思えます。

それは季節変動(気温・湿度)や豆の種類(標高の差・クロップの差)で水抜けのタイミングが微妙に違ってくるからです。

水抜けのタイミングが前後するということは、投入から水抜けまでの時間が前後するということで、それに応じて釜出しのタイミングも前後する、すなわちトータルの焙煎時間が変化することで、その方がより理想的な焙煎なのでは?と思ったからです。

ストップウオッチを2個用意して、1個はスタートからトータルの時間を計測し、もう1個は水抜けを確認して火力を一気に上げるときにスタートさせます。

たとえば、通常9分で水が抜けたら、火力を上げて、ストップウォッチをスタートさせ、2分後の11分で豆の表面温度が192℃にいるようにして、終了します。

この場合は、以前グラフで比較したように、高温短時間焙煎とピタっと釜出しの地点で一致します。

ところが、何らかの原因で、8分45秒で水抜けが確認できたら、この時点で一気に火力を上げストップウォッチをスタートさせます。

スタートからは上記の後半のペース、2分で192℃に収まるようにすると、トータルでは10分45秒の焙煎になります。9分15秒で水が抜ければ、トータル11分15秒の焙煎になるわけです。

水抜けが前後した分、トータルの焙煎時間は前後するわけです。

しかし、残念ながらこのアプローチはなぜかしっくりしません。

フレバーはそこそこに出てきますが、フラットでレスクリーンっぽく、どこかずれているような気がします。

要するに、ピタッとはまったカップが出てこないのです。

この“ピッタとはまった”カップは、高温短時間焙煎でよく経験された方もあると思いますが、焙煎の時間と温度の進行管理が、ピッタとはまったときに、抜けるような明るいクリーンと、ストラクチャリのカップが突如として現れます。

ですから高温短時間焙煎においては、この焙煎の時間と温度の進行管理を、まずもって重要なアプローチとします。

前回のプロバットによる焙煎も、豆の種類や投入量の差を、細心の注意をはらって、いつもと同じラインをトレースすることに腐心していました。

これらのことから、高温短時間焙煎の核心はこのピッタとはまる焙煎プロファイルを特定して、どんな条件下(投入量、豆の硬度、室温・湿度、etc.)であっても、そのラインを上手くトレースすることです。

そして、ここからが重要で、低温短時間焙煎は低温焙煎のアプローチを短時間焙煎に圧縮して取り込むことによって完結したわけですから、あくまで短時間焙煎の範疇にあって、その制約は拭い去ることができない宿命のようなもののようです。

ということは、投入から釜出し迄の全体の焙煎プロファイル、投入から11分で豆の表面温度が192℃前後、12分で197℃前後、、、と決まっていると解釈したほうが良いようです。

焙煎時間が前後することは、高温短時間焙煎がブレてしまうことと同じで、まさにピタッとはまらないのです。

じゃあ、8分45秒で水抜けを確認できたらどうするか?

この場合は、従来どうり間髪を入れずにすぐに火力を上げ、投入から11分で豆の表面温度が192℃になるようにコントロールします。

9分15秒の場合も、すぐに火力を上げて、投入から11分で豆の表面温度が192℃になるようにコントロールします。

水抜けのタイミングが違っていても、投入から釜出し迄の時間と豆の表面温度を一緒にさせることがカップを安定させることになるようです。

しかし、現実にはこの9分を基準として+-15秒の差はとてつもなく大きな差で、後半のデベロップメントの核心が垣間見えてきます。

基本の9分で水抜けの場合でも、2分で豆の表面温度を192℃にもっていくにはかなりの火力が必要で、通常の焙煎機の場合、バーナーの増設が必要になります。

水抜けが8分45秒の場合は、基本の9分で水抜けの場合より、15秒も早く火力を上げることができるため、バーナーの増設とあいまって、余裕をもって11分までに192℃まで持っていけます。

ところが、9分15秒で水が抜けた場合は、残り1分45秒で豆の表面温度を192℃にもっていかなければならず、原則9分のバーナー増設でも難しく、さらなる増設が必要になります。

この場合、ある一定以上の火力になると、強引な火力ゆえにカップが急に悪化しますから、
投入量の減量で対応せざるをえません。

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以上のように、低温短時間焙煎はあくまでも短時間焙煎の範疇にあり、後半の成分進化・デベロップメントは短時間焙煎と同じラインを描かなければなりません。

水抜けが遅くなればなるほど、後半のデベロップメントの時間は決まっていますから、よりタイトな時間内にデベロップさせなければなりません。

かつて恩師が、「水抜きはできるだけ奥の方が良い、しかし奥過ぎるとデベロップが不足する。」といっていた意味は、まさにこのことを意味しています。

タイトな時間内に釜の内部温度を上げて、豆の表面温度を引き上げるわけですから、数秒でも早く火力を上げたいのですが、水抜けを待たなければならないというジレンマがいつも付きまとうことになります

このジレンマを解決するには、水抜けを早く完了させればよいわけですが、これは焙煎機の能力に大きく依存しているため、その能力内で最善を尽くすには、投入量を減らすことで対応をせざるを得ないという現実がお解りいただけると思います。

優秀な純熱風型の焙煎機であれば、8分30秒以前に水抜けが可能と思いますが、純熱風型は低温焙煎を採用した場合、後半のデベロップメントにおいては欠点が出てきますので、ドラム型の焙煎機で水抜けを工夫(投入用の減量)するか、あるいは前半を純熱風、後半をドラム式といった併用できる焙煎機を考案すれば、理想的な焙煎ができると思います。

次回は、成分進化の進行法則・デベロップメントサイクルの謎に迫ってみたいと思います。

2016/12/05

ニュークロップ対応の焙煎プロファイル

前回までは通常の短時間焙煎と低温短時間焙煎の比較検討をしてきました。

今回は、スペシャルティコーヒーロースターとして頑張っている、友人の短時間焙煎の焙煎プロファイルをご紹介いたします。

焙煎機はプロバットの旧L22型で、少量焙煎を実行しています。

コスタリカとグアテマラの焙煎プロファイルを提供してくださいました。

「l21_graph.xlsx」をダウンロード

Photo_2















ご存知のように、スペシャルティコーヒーロースターを目指す場合は、ニュークロップの焙煎対応が必須となります。

ニュークロップといっても、バリバリの入荷したての生豆から、収穫から約1年を経過して、次の入荷待ちまでの生豆と、さまざまな生豆が在庫に混在しています。

それらの生豆の状況を掌握して、焙煎ペースがぶれないようにコントロールしなければいけません。

特に入荷したてのニュークロップは要注意です。

不用意に投入しようものなら、あっという間に焙煎が進行して、気がついたときには修正が不可能な状況になってしまった、という経験をされた方も多いと思います。

含水量が多いのだから、その分時間がかかるとイメージしがちですが、実際はその逆でモイスチャ「水分」の熱伝導が良いことと、硬くしまった肉質が蒸れにくいため、進行は早くなるようです。

進行が早くなってしまったときのカップは、アフターやマウスフィールが刺激的となり、レスクリーンになります。

また、含水量が多いのなら、焙煎時間を長めにすればよいのでは?と思いますが、従来より時間をかけたときのカップは、明るさが薄れ、暗いトーンになりがちです。アフターに雑味が残り、マウスフィールが悪化します。

以上のカップの結果から、ニュークロップであっても、細心の注意を払って、従来の進行ペースをトレースしなければなりません。

そのためには、投入時の釜の内部温度(排気温度)と、豆の表面温度(空だきのセンサー温度)を従来より低くして投入することで、豆の表面温度のボトムを従来よりやや低い温度にもっていきます。

どのくらいの下げ幅にするかは、試行錯誤するしかありません。有能なローストマスターは経験知から、その数値を的確に導き出せます。

また、このニュークロップが数か月経過し、特に夏季の高温多湿での劣化が重なると、いつものようにボトムがうまく取れても、進行が後手にまわって、正確に従来のペースをトレースできない事例が出てきます。

この場合の原因は、ボトムから反転上昇するころから豆が蒸れはじめ、蒸気の放出によって豆の表面温度の上昇が鈍くなるからです。

特に低地産が多いブラジルはこの事例が顕著で、夏季に麻袋の1/3程度に残ったブラジルは注意が必要です。

この場合は、ボトムを若干高くして、釜の内部温度を従来より不必要に上げずに、従来のペースをトレースできるようにします。
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友人の店には、世界中の産地からトップオブトップやスペシャルティ、そしてCOEのロットが常時入荷していてます。

彼の多くの焙煎プロファイルからもその状況が読み取れてきます。

細心の注意をはらって、投入時の豆の表面温度のセンサー温度と、排気温度を設定しています。

ただ、今回公開して頂いたコスタリカとグアテマラの投入温度の差は、クロップの差や豆質の差だけではなく、投入量の違いから大きな差があります。

おそらく、コスタリカが5Kでグアテマラが10Kと思われます。投入量の少いないコスタリカのほうが低い温度で投入をしています。

そうすることによって、豆の表面温度のボトムを同じラインにきれいに乗せています。

(参考に、以前の富士ローヤルの5Kg釜のスマトラの短時間焙煎と比較したグラフを個々に表示します。)

Photo

Photoおよそ11分ころにはコスタリカもグアテマラも、スマトラと同じ豆の表面温度になっています。

そして、これ以降はスマトラと同じラインをトレースしていけば、中煎り~深煎りのペースになります。

11分以前ですと、同じ表面温度では1分~1分半ほど、長くかかっていますが、これはおそらく、フルフレバーローストの浅煎りが180度台後半のため、少し長く時間を取って、成分の進化を十分にしたと思われます。

何度も焙煎とカッピングを繰り返して、このラインが導き出されているわけです。

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さて、ここで焙煎をある程度経験された方なら、投入から9分までのスマトラとグアテマラ・コスタリカの釜の内部温度(排気温度)の差が気になると思います。

コスタリカ・グアテマラ・スマトラとも豆の表面温度の進行がさほど差がなくても(途中で少し差が出てきますが、11分ごろには差がなくなってきます。)、なぜプロバットのほうが低い内部温度であるか?という疑問です。

スマトラは富士ローヤルの5Kg釜に2Kgを投入しています。

それに対して、グアテマラ・コスタリカはプロバットの22Kg釜にそれぞれ10Kg・5Kgを投入しています。

メーカーの釜の公称容量はシリンダー容量から算出されていると思いますが、とりあえず、公称容量に対する豆の投入率から、スマトラ(投入率40%)とそれに近いほうのグアテマラ(投入率45.4%)を比較してみます。

驚くべきことは、両者の投入温度(豆の表面温度センサーと排気温度)がほぼ同じで、かつ両者の豆の表面温度のボトムが同じでも、排気温度のボトムがプロバットのほうが断然低いことです。(また、プロバットのほうが投入率が高いので、なおさらのことです。)

これは、釜の保温力の差が原因であると思われます。

実際にプロバットL22と富士ローヤルの5Kを見比べただけで、保温力の差は歴然ですし、釜本体やシリンダーの材質(鋳物)の違いもあるのでしょう。

ドラム式の焙煎機で、鋳物製のプロバットがいまだに人気があるのは、この排気温度が低くても、豆の表面温度はしっかりと進行してくれる構造にあると思います。

また、シリンダーとガスバーナーの外側に鉄板で囲い込むようにフードが設置されていて、外気がバーナーの炎を通過しなければ、シリンダー内に取り込まれないように工夫されています。

また、シリンダーの鉄板からの輻射熱を避けるために、シリンダー外側にもう一枚鉄板がまかれていて、2重の構造になっています。

これらのことも、低い温度でも安定して、焙煎を進行させることが出来る構造になっています。

このプロバットの特性は、まさに低温短時間焙煎に最適な焙煎機であると思いますが、成分進化の段階でどのくらい釜の温度が上昇してくれるかが未知数です。

投入量を減量するか、あるいはバーナーを増設をするかで、低温短時間焙煎を試みれば劇的に品質は向上すると推測できます。

実際にチャレンジされた方のご報告をお待ちしています。

2016/11/19

高温短時間焙煎と低温短時間焙煎 Ⅲ

前回は、通常の(高温)短時間焙煎と低温短時間焙煎をグラフで示し、前半の工程(水抜き工程)を比較検討しました。

このグラフによって、通常の短時間焙煎の欠点、すなわち風味特性を強調すればするほど、アフターやマウスフィールがいびつになるという欠点を、低温短時間焙煎がどのようにして改善しているか?を、大まかに理解していただけたかと思います。

その要点は、

●水抜けが完了するまで、釜の内部温度を上昇させずに一定の温度(180℃以下)を保つ。

●そして、あくまでも短時間焙煎を維持する(焙煎の大原則)ために、7分で豆の表面温度が167度に至るよう進行管理をする。          

でした。

この矛盾する要点(低温と短時間)を上手くまとめ上げるには、投入時点における十分な釜の余熱の確保と、投入量のバランス(思い切った減量)がポイントでした。

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Photo

今回からは後半の工程、すなわち成分進化の工程を比較検討しますが、上記の特徴から低温焙煎の欠点がもろにこの工程で表れてきます。

焙煎後半の8~10分ころにおいて、通常の短時間焙煎に比べ、釜の内部温度や豆の表面温度が相対的に低くて、成分の進化が十分になされないからです。

具体的には通常の短時間焙煎では、8~9分で釜の内部温度は200℃以上に至っていますが、低温短時間焙煎では依然として180℃以下に保たれています。

全体としての水抜けを最優先するために、低温短時間焙煎は水抜けを確認するまでは、釜の内部温度を引き上げることができませんので、結果としてどうしても後手に回ってしまうことになるわけです。

(成分進化を優先させて、水抜けが確認できなくても、釜の内部温度を早く引き上げていけば、それなりの成分進化の結果が出てきますが、やはりアフターやマウスフィールの領域で欠点が出てきます。通常の短時間焙煎と変わらなくなってしまうわけです。)

どの時点で釜の内部温度が何度に至っていれば、そしてどのくらいの時間を経過すれば、成分の進化は適正に進化するか?という焙煎後半の核心はやはりカッピングによって突き詰めていくしかありません。

ひょっとすると、低温短時間焙煎では遅すぎて(温度が低すぎて)、成分進化は結局無理かも知れないといった不安は、過去いつもつきまといました。

しかし、水抜けを確認してから、できるだけ早く釜の内部温度を引き上げることができれば、低温短時間焙煎の場合でも、適正な成分進化は可能であることが確認できてきます。

グラフから分かりますように、水が抜けて一気に火力を上げて、ほぼ1分以内に180℃以下から230℃にまでに、釜の内部温度を上昇させれば、後手に回った成分進化をとり戻すことが出来ます。

両焙煎とも投入から7分の時点で、豆の表面温度が167度で経過しますが、その後は、低温焙煎が釜の内部温度を上げずに一定にするため、じわりじわりと温度差が開いていきます。

そして8分40秒前後で、低温焙煎が水抜けを確認して、釜の内部温度をひきあげる時点では、豆の表面温度差は10度以上開いています。

この時点から、一気に釜の内部温度を引き上げて、1分以内の9分40秒前後までに釜の内部温度が230度に至れば、後手にまわった成分進化はとりもどすことが出来る、、、という結果をカップから得られます。

グラフを見て頂ければ、釜の内部温度の急激な引き上げに伴って、豆の表面温度も上昇ペースを速めていくのがお解りいただけると思います。

投入から10分経過の時点では、両焙煎の豆の表面温度差は約6℃までに縮小して、11分の時点では、ほぼ差はなくなります。

(以前にご紹介しましたAGFの匠焙煎における2段目の上昇カーブがこれに当たります。)

この11分の時点が浅煎りのポイントで、豆の表面温度が192℃前後に至ります。

このことから、焙煎時間の経過と豆の表面温度が成分進化に直接関与していると思われます。

そして、それを左右するのは、釜の内部温度であるわけです。

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このわずかな1分内の出来事で、焙煎後半の成分進化の良否のピンポイントが隠されています。

そのピンポイントは

*水抜けの判断が遅れて、釜の内部温度の引き上げが後手にまわった場合や、水抜けの判断が速すぎて、釜の内部温度の引き上げが速すぎた場合にどうカップは変化するか?


*できるだけ早く釜の内部温度を上げるには、釜の内部温度が1分以内に230℃に上昇に上昇すればよいが、それ以上の、例えば240℃であったらカップはどう変化するか?


*今回はスマトラであったわけで、豆の種類によって、230℃の引き上げが、豆の表面温度の進行がどう変化するか?そしてカップはどうか?

といった意図的な操作の繰り返しと、カッピングの繰り返しの検証から特定できてきます。

このところを今後詳しく検証していきます。

2016/11/03

高温短時間焙煎と低温短時間焙煎 Ⅱ

 通常の(高温)短時間焙煎と低温短時間焙煎のプロファイルを以下のエクセルに進行表とグラフで示しています。プリントアウトして本文と一緒に見ていただければ幸いです。(オフィスソフトによっては、グラフが正常に表示されないことがあります。)


「indonesia2_.xlsx」をダウンロード


2_3
共に インドネシア・スマトラ・アチェの焙煎プロファイルです。
青のラインが短時間焙煎で、緑のラインが低温短時間焙煎を示しています。

実線がそれぞれの豆の表面温度、点線がそれぞれの釜の内部温度を示しています。

両者とも7分前後で、豆の表面温度が167℃前後に至るように表示されていますが、意図したわけではなく、それぞれ別個に焙煎の進行とカップの検証を繰り返した結果、偶然にも両者のベストカップは同じ展開になっていました。

このため、比較検討することが非常に分かりやすくなっています。

14分で207.5度の釜出しは、およそフルシティの焙煎度で、13分でハイ~シティ、12分でミディアム、11分でライトローストとして、釜出ししています。

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まずもって目につくのは、低温短時間焙煎の前半における、排気温度(内部温度)が高温短時間焙煎に比べ、低めでかつ上昇せずに一定であることです。

豆を投入すると、1分30秒前後で豆の表面温度がボトムに至り、やがて上昇していき、白く蒸れはじめ、その後色づき始めてくる段階に至ります。(入荷したてのニュークロップでは蒸れの段階がないのが大半です。)

この段階で、釜の内部温度を上昇させずに、一定の温度(この場合は177℃)を維持することによって、表面からのローストの進行を極力抑え、全体の水分をぬいていきます。

ボトムから勢いよく上昇してきた豆の表面温度は、釜の内部温度を上げないため、徐々にそのペースを落としながら、釜の内部温度に近づいてきます。(4分~8分)

およそ7分前後で豆の表面温度が167℃に至りますが、そのまま水抜きを続けていますと、8分30秒から9分の間で水抜け完了のサインが出てきます。

ボトムから水抜けまでの豆の表面温度のラインが、緩やかなカーブを描いていますが、このカーブが芯からの水抜きを可能にしていると思います。(以前に指摘したAGFの匠焙煎のカーブも同じです。)

そのサインを見落とさずに、素早く火力を上げ、一気に釜の内部温度を上昇させます。

それに反して、通常の短時間焙煎は、たえず釜の内部温度を上昇させて、豆の表面温度を引き上げていきます。(3分~9分)

これは、火力能力の高い焙煎機で、ニュークロップの適量(少量)を焙煎する場合のパターンで、スペシャルティコーヒーロースターの大半が行っている、短時間焙煎です。

プロバットがドラム式の焙煎機を開発してから今日に至るまで、古今東西の真っ当なロースターたちが行きついた定番中の定番焙煎と思います。

まずもって、焙煎の適正時間が最初にあって、焙煎機の能力と容量から、投入量が決定されます。
しかし、スペシャルティコーヒーの大原則であるニュークロップの場合、投入してからの展開が思いのほか早く、あっという間に進行してしまう経験則から、投入温度や火力を低めに設定してしなければなりません。
そうすることによって、トータルの焙煎時間が定番の焙煎時間と一致することになるわけです。
(この過程を水抜きをする工程と呼称して、そのために投入温度や火力の出力を抑えるという考え方をされるロースターの方が多いのですが、これは本末転倒で、ニュークロップの焙煎を定番焙煎の時間枠にはめ込むための手段にすぎません。

工程を明確に分けるのなら、何らかの水抜けの確認作業があって、そののち成分進化の過程に移行する所作があってしかるべきです。)

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以上の説明で、両者の焙煎コンセプトが理解していただけると思います。
 
低温短時間焙煎は、従来の(高温)短時間焙煎が釜の内部温度を無造作に引き上げることによって、表面から焙煎が進行して、その結果として豆の芯に水を残してしまうために、アフターやマウスフィールが阻害されると考えます。

あるいは、投入量が適量であって、水抜けがドンピシャリであっても、強い火力で豆の表面が歪み、アフターやマウスフィールが阻害されるとも考えます。

原因がはっきりと特定できているわけではありませんが、おそらくグラフでいうと、4分から9分の釜の内部温度上昇の差が影響していると思われます。

次回は後半の成分進化の段階における、両者の違いを説明していきたいと思います。

2016/11/02

読者からのメール Ⅰ

前回のエクセルによる焙煎プロファイルは多くの方の“反響”をいただきました。

といっても、お叱りのメールが多く、とても反省している次第です。

同じ思いをされている方は、もっと多くおられると思いますので、
以下、メールの一部とそれに対する僕の返信をご紹介して、ご理解をいただきたく思います。



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Date: 2016/10/20, Thu 01:25
Subject:  低温短時間焙煎プロファイルを拝見して
 
以前メールで焙煎についてアドバイスを頂きました〇〇と申します。
ブログの更新を楽しみにいつも勉強させて頂いています。

本日は低温短時間焙煎のプロファイルを拝見して疑問に思うことがありメールしました、お
答え頂ければ幸いです。


まず私の思う低温短時間の要点は(山本 様の釜による)

・予熱後豆を投入、釜の内部温度はボトムの175度以上180度未満に固定

・豆の表面温度は5分30秒〜6分00秒に167度を通過

・8分〜8分30秒(豆の表面温度は174度〜175度)水が抜けたらガス圧を全開

・ガス圧を全開後、内部温度は240度前後まで引き上げすぐに引き下げながら調整
ガス圧を全開にした1分後にファーストクラック、さらに1分後豆の表面温度は192度前後

・その後豆の表面温度は1分間に5度上昇、目的のローストでおとす

この様に理解していたのですが拝見した低温短時間焙煎のプロファイルでは5分30秒〜6分00秒の豆の表面温度など上記との違いがあるのはどうしてなのでしょう
また私の低温短時間焙煎に対する認識に間違いがあればアドバイスをよろしくお願いいたします

美味しく焙煎したいです‼︎


Subject:  Re: 低温短時間焙煎プロファイルを拝見して
 
 
〇〇様
メールありがとうございます。
ご指摘のとおり、データーが矛盾しています。
これはひとえに,僕が逐一ブログを更新していないことが原因で、反省しています。
お許しください。
状況は以下のとおりです。
今年の夏季から現在(10月)に至るまで天候が不順で、焙煎に大いに悩みました。
 
クリーンカップができにくく、この原因は何なのか?と思案していましたが、原因は水抜けが悪くなっていると思い、前半の水抜き工程を延長しました。

30秒そして、1分延長して、投入から7分00秒で豆の表面温度が167℃に至るようにしました。

その結果として、クリーンカップが改善されたため、現在に至っています。
その結果として、ガス圧の引き上げは1分伸びて、9分、、、、というわけではなく、8分45秒前後で引き上げています。
どうしてか?といえば、その時点で水が抜けているからです。

1分延長しても、その分水抜きが奥に行くのではなく、速めに抜けていく傾向がありるようです。

早ければ、そのぶん早く釜の温度を引き上げることができますから、速く釜の内部温度も立ち上がり、成分進化もよくなってきます。

水抜けが改善され、かつ成分進化も改善されるという結果になります。

このあたりの微妙な関係に低温短時間焙煎のポイントがあるようです。
また、その時の豆の表面温度は174℃~175℃ではなく、もっと低くなります。

水抜きが、長くなればなるほど、表面温度や釜の内部温度は低くなり、成分進化がむつかしくなってきます。
そして、240℃ではなく230℃、、、、あまりに多くのカップの結果が、今回出ています。
次回またこのへんをメールします。
宜しくお願いいたします。
  

                   サードウェーブコーヒー:山本敦則
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Date:
2016/10/21, Fri 16:33
Subject:焙煎プロファイルについて
はじめまして、〇〇と申します。
数ヶ月前ほどからになりますが、ブログ「焙煎日記」を大変興味深く拝見させて頂き焙煎の参考にさせて頂いております。

ーーー中略ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて、焙煎につきましては、色々うかがわせて頂ければと思っておりますが、自分の中でまだ整理できていませんので、今特に気になっている点をお聞きできればと思います。

・中点からの温度上昇の傾きが急の場合表面だけ焙煎が進んでしまう事が考えられ、そのため 急にならないようにするため投入温度を上げると思いますが、中点はある温度以下にならなければいけないなどの制約は低温短時間焙煎の場合あるのでしょうか?
・低温短時間焙煎:その鳥瞰では、豆の表面温度167℃に達するのは6分前後とあり、
スマトラ・アチェの焙煎プロファイルでは7分を超えていますが、実際の焙煎では7分を目処に行っていますか?

質問のご返信はお時間があり、可能であればで結構です。

ブログとても参考になっております。今後も楽しみにしています。



Subject:
Re:焙煎プロファイルについて


〇〇様

メールありがとうございます。

以下お答えいたします。


・中点からの温度上昇の傾きが急の場合表面だけ焙煎が進んでしまう事が考えられ、そのため急にならないようにするため投入温度を上げると思いますが、中点はある温度以下にならなければいけない、などの制約は低温短時間焙煎の場合あるのでしょうか?

過去、恩師がこの焙煎コンセプトをサンプルロースターで提案されましたが、衝撃的な焙煎でした。

一定のごく細い炎でず~~っと水を抜き、(その間とても長かった印象があります)頃合いを見て、サンプルバーで水抜けを確認して、いきなりガス圧を全開にして、焙煎したことを思い出します。

このことを低温焙煎の原点とすれば、中点の温度制限はない、と思います。

しかし、本焙煎の経験を重ねてくると、ある程度の時間内に焙煎を納めないと、上手く煎れないことが分かってきます。

この焙煎のトータル時間の制約から、おのずと下限はあると思います。

そして、やみくもに長く水ぬきをしても(低い温度で水抜きと同義語になります。)、水が抜けていざ釜の内部温度を上げようにも、その時の釜温度や表面温度が低すぎて、十分な成分進化を達成できないといった危険があります。

これは低温焙煎の最大の欠点で、とても飲みやすいが、風味特性がショボくて、何ら感動もないコーヒーになってしまいます。

また、中点というより、投入からおよそ3分以降の釜の内部温 度(水が抜けるまで上げない温度帯)の上限は、カップからあると思います。

少なくとも182~185℃で維持した場合、アフターやマウスフィールが悪くなってきますから、これ以下の温度帯を維持し、かつ目的の時間内に水抜き工程を納めることが必要と思います。

・低温短時間焙煎:その鳥瞰では、豆の表面温度167℃に達するのは6分前後とあり、スマトラ・アチェの焙煎プロファイルでは7分を超えていますが、実際の焙煎では7分を目処に行っていますか?

他の方からのお叱りのメールも届いています。この経緯は次回のブログにアップします。

以上宜しくお願いいたします。


                      サードウェーブコーヒー:山本敦則


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 日々の結果を、逐次ブログで報告するのがベストですが、諸般の事情からとても無理ですので、上記のような状況が出てきてしまいます、、、、ご理解をください。

「また違ったことを言ってるな?」と疑問がありましたら、ぜひメールでお知らせください。

また、どんなご質問でもかまいませんので、ご遠慮なくご質問をください。

多くの方が参加して、ともに焙煎技術力の構築を目指すブログにしていきたいと思っています。

宜しくお願いいたします。
 

2016/10/14

高温短時間焙煎と低温短時間焙煎 Ⅰ

前回は基本的と思われる高温短時間焙煎のプロファイルを示してみました。

セカンドウエーブの旗手たるスタバやピーツが日本に進出して、アメリカのスペシャルティコーヒーが伝播しだすと、やがて焙煎ノウハウも伝播しだしてきました。

彼らとの交流が盛んになって、こうした焙煎ノウハウも漏れ始め、一定期間を過ぎるとワーッと拡散しだします。

最初はいろいろな根も葉もないノウハウもあったりしますが、彼らとの交流から20年くらい経過した今は、それらが取捨選択されて、まっとうな短時間焙煎が、良識的なロースターの間では共有されていると思います。

前回、開示した焙煎プロファイルは、10年ほど前の僕のプロファイルですが、最近、ことあるごとにスペシャルティコーヒーロースターの方々に焙煎のプロファイルをお聞きするたびに、お互いの焙煎プロファイルがほぼ一致していて、驚いています。

これはもはや、焙煎そのものの基本的プロファイルといってもいいと思います。

セカンドウェーブの旗手たちが、コーヒーの基本に立ち返って、欧州の老舗に師を求めたとき、まずもって焙煎ノウハウも師匠の欧州から学び取ったことは、彼らの深いローストから理解できます。

この欧州から学んだ焙煎プロファイルは、現在のアメリカや欧州、そして僕たち日本のサードウエーブを標榜するロースターたちが結果として共有する焙煎プロファイルになっているわけです。

伝播してきたこの基本的プロファイルが、以前の僕たちの長い時間の焙煎に対して短いため、“短時間”焙煎と呼称しているのでありますが、最初からこの基本プロファイルから入門している、現在の若い人たちにとっては、短時間という呼称の意味が解らないのは無理もありません。

それくらい技術ノウハウの伝播と浸透の早さには、あらためて驚きます。

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上述のように、現在のサードウェーブの主要な担い手はこのセカンドウェーブの基本的焙煎プロファイルをそのまま受け継いでいるにすぎません。

トレーサビリティに始まる豆の詳細な情報開示や、オーダーごとのバーチャルな抽出といった“サードウェーブ”の流儀は華やかに開花しましたが、焙煎ノウハウは全く変わっていないということです。

だからこそ“基本的焙煎プロファイル”と表現することができるのですが、恩師の提案された“低温焙煎”ノウハウはどに行ってしまったのでしょうか?

そもそも、低温倍煎は高温短時間焙煎の欠点である、アフターやマウスフィールの“歪さ・違和感”を解消して、まっとうなアフターやマウスフィールを再現することを標榜としてきました。

豆の持つ風味特性を強調するためには、強い火力と高い投入温度で焙煎すれば、その目的はある程度達成されます。

ただ、このような短時間焙煎の最大の欠点は、アフターやマウスフィールの領域において、アストリンジェントやビターといった雑味がどうしても出てしまい、トータルとしてのカップが悪くなってしまうことです。

風味特性を強調すればするほど、アフターやマウスフィールは歪になり、そのアフターやマウスフィールを改善しようとすると、今度は風味特性がなおざりになるといったジレンマがいつも付きまといます。

現実には、各ロースターが両者の落としどころのポイントを見つけて、妥協しているにすぎません。

風味特性を損なうことなく、マウスフィールやアフターを向上させるーーーこの矛盾する課題からノウハウが構築されたのが”低温焙煎”のメソドであるわけです。

その歴史的経緯は後の考察に譲りますが、まずもってその基本的な着想は、焙煎工程を水抜きの工程と成分進化の工程に分け、焙煎の前半を水抜き工程とし、焙煎の後半を成分進化の工程と明確に分けることにあります。

高温の短時間焙煎は、明確に焙煎工程を分けるというコンセプではなく、単に風味特性を引き出すことを主眼としているため、結果として水を抜きながら、成分進化を同時に進行させています。

このため、豆の内部に水を残したまま焙煎が進行して、それがいつまでも芯に残って、アフターやマウスフィールを阻害するのです。

強引な焙煎により、豆の表層から水が抜け、水が抜けた表層から成分進化が始まり、徐々に豆の内側にその過程が移っていきますが、いつまでたっても芯の部分の水は残ったままという状況をご理解いただけると思います。

結局、高温短時間焙煎は芯に残る水分量がより少なくなればベターであって、そのベストな状況が前回示した基本的な焙煎プロファイルに落ち着くわけです。

次回は具体的に、高温短時間焙煎(基本的焙煎プロファイル)と低温短時間焙煎のプロファイルを比較検討していきます。

2016/09/14

短時間焙煎への挑戦  Ⅱ

前回は経験則として、一定容量の焙煎機で、多く投入すれば焙煎時間が長くなり、少なく投入すれば焙煎時間は短くなるという結論を得ました。

この結論は、焙煎を少しかじれば、イメージとして想像できることですが、それを実際に焙煎とカッピングを繰り返して導き出したわけです。

たまたま5K釜であったわけですが、それぞれの投入量での妥当な焙煎時間が、経験則から具体的に導き出されました。

ただそれは、ランニングコストなどの経営指数が背景にあって、あくまでも妥協したカッピングであったものでした。

しかし、妥協せずに、投入量を減らして、短時間化を突き詰めていくと、ある時間帯で劇的にカップは向上します。

シティローストでおよそ、13分~14分に至るペースになると、抜けるような明るさーブライト感が出てきます。フレバーも輪郭がはっきりとしてきて、その豆のテロワールが把握できてきます。

そして、何よりもマウスフィールの向上がなされます。奥行きがあって立体感があるストラクチャリーが出てきます。

ひと皮もふた皮もむけたーーーという表現のごとく、洗練されたカップになります。

《前回から今回にかけては、短時間焙煎を導入するための方法論です。今まで“低温短時間焙煎”と“高温短時間焙煎(一般的な短時間焙煎)”をごちゃまぜに語っていたので、多くの読者の方々に混乱をきたしていたようです。

まず、一般的な短時間焙煎を説明して、そのあとに低温短時間焙煎を説明していきます。》

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ある時ひょんなきっかけから、過去の膨大な焙煎記録の中から、短時間焙煎にチャレンジしていたころの記録群を見つけ出しました。

その中から偶然に、勉強会で恩師にお褒めをいただいたバッチの記録を発見しましたので、そのプロファイルをエクセルに要約します。

「indonesia.xlsx」をダウンロード
 
豆はインドネシア・スマトラのアチェ地方の通称マンデリンで、メルカンタからひっぱてきたものと思います。

焙煎時間は14分でフルシティ、最終の釜出し豆の表面温度は207.5℃になっています。

後半の豆の表面温度と釜の内部温度の記載が若干不備でしたが、できる限り前後の記録から抜けた数値を推測して記入しています。

ガス圧は記録がないのですが、投入から1分30秒前後に至った、豆の表面温度とその時の排気温度の中点は104.4℃と164℃ですが、投入から7分の時点で豆の表面温度166.4℃で、排気温度が204℃に上昇していますから、ある程度の強い火力で進行をさせていると推測できます。
その後、ファーストクラックから釜出しまでは、釜の排気温度を比較的安定させて、緩やかに上昇させています。

次回以降、低温短時間焙煎の詳細を示していきますが、投入からの6~7分後の排気温度と、ファーストクラックから釜出しまでの排気温度が全く違う流れであることがご理解いただけると思います。

それはまさに真逆で、短時間焙煎と低温短時間焙煎の違いが明白となり、そのことがどうカップに影響しているかを解明していきます。

「スイート、クリーン、スパイシー、アーシー、、、」恩師の口から発せられたコメントから、焙煎が出来た!と背筋が震えたことを今も思い出します。

まさにエポックメイクな出来事でありました。

僕も含めて当時のメンバーや、多くのスペシャリティロースターはこの短時間焙煎を習得して、現在にあります。

しかし、いまだ恩師の低温焙煎はその真実の姿を極められていません。
次回以降はその真実のを姿を現して行きます。

次回をご期待ください!

2016/08/02

短時間焙煎への挑戦 Ⅰ

前回は、低温短時間焙煎の全体の流れを鳥瞰しました。

その中で、前半の水抜き工程において、投入量が重要なポイントであったわけですが、今回はその理由を焙煎の経験から考察してみます。

以前スペシャリティコーヒーロースターを目指す勉強会の仲間で、富士ローヤルの5K釜に5kの豆を投入している仲間がいました。

メーカーの公称キャパ、目いっぱいに投入していたわけですが、カッピングと焙煎を繰り返した結果、焙煎のトータルは21分前後になっていたと思います。

これはこれで、当時の5K釜5K投入のベスト焙煎であったと思います。

販売量が爆発的に伸びていった僕たちは、ダイレクト輸入が故に商社ファイナンスに頼れるわけがなく、原材料の生豆の確保に資金繰りがとられ、四苦八苦していました。

そんな状況であれば、販売増に見合った焙煎機の新規購入は無理であり、当面は今の釜で頑張ろう!となるわけです。

ほとんどメンバーは、そんな状況にあって、投入量はできるだけ多く投入して、ランニングコストを抑えることに必死であったわけです。

そういうことから、「もしかしたら投入量を全面的に見直ししなければ、焙煎の核心には迫れないのでは?」と直感していても、投入量は聖域であり、減らすことなどはタブーであったわけです。

また、僕を含めて販売量がまだ少なかった仲間で、5k釜を所有する仲間では、ほぼ3k投入で焙煎のトータルは15~16分前後でした。

カッピングスキルが向上して、焙煎とカッピングを繰り返し、なおかつ勉強会で仲間の豆をカッピングをしながら、お互いの焙煎の工程を整合してきた結果ですから、5k釜で3k投入で15~16分焙煎もベストであったと思います。

(当時は深煎りが主流で、シティからフルシティの焙煎度でした。)
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5K釜での、5K投入の焙煎時間21分前後と、3K投入の焙煎時間15~16分前後の違いを、今ここで分析したいのですが、何しろ10数年前のことで、おおざっぱなデータしかなく、単純な比較はできません。 

しかし、データーを整理していると、驚くべき結果が出てきました。

それは、ファーストクラック以降の両方の後半が、ほぼ一致しているということでした。

ということは、投入からファーストクラックの差が、そのまま焙煎時間の差になっているということです。

当時は、恩師からー焙煎工程を前後に分けるという新しい焙煎ノウハウー提示された時期と、欧米ロースターの短時間焙煎が伝播してきた時期と重なっていますが、ほぼ全員がまだ従来の自前の焙煎で、カッピングと焙煎を必死に繰り返していた時期でした。

ですから、ここには“水抜き工程”とか“成分進化の工程”というはっきりとした工程意識はないわけですが、便宜的にファーストクラックまでを前半の工程として、それ以降からラストまでを成分進化の工程とすれば、まめの投入量の変化で、水抜けの時間が変化すると捉えてよさそうです。

多く投入すれば、長くかかり、少なければ短くてすむわけです。

これは焙煎とカップを繰り返して、検証してきた結果ですから、妥当な結果だと思います。
もちろん、後半の成分進化の工程が両方とも適正な進行であったことが、大前提にあることはお解かりいただけると思います。

さて、本題はここからです。

当時は上述したように、米国のスペシャルティコーヒーロースターの短時間焙煎が伝播しだした頃で、短時間焙煎へのチャレンジの時期でもありました。

僕の場合、ACEのポール・V・ソンガーさんの焙煎セミナーにヒントを得て、13分の焙煎を目指して、投入量の減量と釜の余熱の関係に没頭していました。

僕はメンバーの中では劣等生で、比較的に注文に追われる環境ではなかったため、投入量を減量(=バッチ数を増加)させても、余裕がありました。

その過程から得た結論は、5K釜では2K以下投入であれば、短時間焙煎が可能になるということを得ていました。

十分な釜の余熱を利用して、2K投入すれば、(適正な火力であれば)およそ1分半でボトムに達して反転します。その後9分でファーストクラックが始まり、13分でフルシティローストの完成です。

3K投入であれば、12分でファーストクラックが始まり、16分でフルシティローストの完成、5K投入であれば、17分でファーストクラックが始まり、21分でフルシティローストの完成でした。

焙煎とカッピングを繰り返して出てき結果からは、投入量を少なくすれば、短時間で水が抜けて短時間焙煎が可能であるということです。

3K投入で、釜の余熱を上げたり、ガス圧を上げたりして9分のファーストクラックを目指しても、上手くいきません。

それらはすべて、過激なカップになり、なんとなく直感として釜の限界を感じます。

強引に余熱や火力で調整しても、素直に豆が反応してくれない事態に直面するからです。
だからこそ、カップを繰り返すことによって、少し時間を長くして、12分前後にクラックが来る頃に落ち着くのです。

ここに釜の容量と投入量で、水がスムースに抜けていく関係があることが分かり、投入量を減量していけば、短時間焙煎が可能となるわけです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

5K釜で5K投入と3K投入、そして2K投入のカップの違いは、それぞれが別個にカップの判断から妥当な範囲として“良し”としたのであったのですが、全体を2K投入のものから比較すると、マウスフィールやアフターにおいて圧倒的な差が出てきます。

特に水抜けに長く時間のかかったものは、ざらついたマウスフィールが目立ちます。

味覚の表現に“雑味”というものがありますが、まさにこれで、最初のインパクトでこれが出てきますが、他にフレバーや甘さのインパクトがよければかき消されてしまう要素でもあります。

特に、冷めてくると良い素材ほど、フレバーの特徴や甘さ、クリーンが際立ってきて、焙煎による“雑味”は後退してきます。良いオイル分が欠点をカバーしてくれる結果、カップは向上してくるわけです。
最初の嫌なインパクトがあっても、最終的には“美味しい”というカップが成立してしまいます。
 
焙煎の欠点をまさに素材がカバーしてしまうわけです。

そして、この現象は、多くの日本のスペシャルティコーヒーロースターに顕著に表れています。

そのほとんどは、大量投入によるカップの欠点(=焙煎の欠点)を認知することが出来なくても、一生懸命にスペシャルティコーヒーを拡販紹介するロースターです。

しかし、大量投入による焙煎の欠点を認知していて、しかも素材の良さがそれをカバーすることも認知している主流のスペシャルティロースターもいます。

いわゆる確信犯で、スペシャルティコーヒーとしての品質維持と、注文をさばかなければならない現状とを、上手く妥協していることが、カップからうかがえます。

ともあれ、焙煎を短時間化することによって、カップは向上します。

そしてその短時間化は、釜の容量から投入量が決定され、投入から9分でファーストクラックを迎えるのが、短時間焙煎のベストと思います。
 

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